今回から、3社目(英)BT Group plcの Annual Report 2019のKAMを読んでいこう。
1社目の(英)BAE Systemsと、2社目の(スイス)ロシュの比較では、BAE Systemsの方がKAMの内容は充実していた。英国の場合、ISA(IAASB)の要求事項に含まれないISA(UK)の独自の要求事項があるだけでなく、記載内容も充実しているようだ。

監査報告書は、Annual Report 2019の101-106頁に6ページにわたって掲載されている。グラフなどは使われておらず、ビジュアルに凝った作りにはなっていない。また、監査人は、PwCからKPMGに引き継がれており、2019年3月期は、KPMGが監査人に就任した初年度の監査であることが、監査報告書に記載されている。
監査報告書の原文は、この記事の最後に貼り付けているので、参考にして欲しい。

意見の根拠

我々は、国際監査基準(UK)(ISAUK))および準拠法に従って監査を実施しました。 我々の責任は以下のとおりです。 我々は我々が得た監査証拠が我々の意見の十分かつ適切な基礎であると信じています。 我々の監査意見は、監査委員会に対する我々の報告と一致している。

我々は、2018711日に株主による監査人として最初に選任されました。2019331日に終了した事業年度は、監査人としての初年度です。 我々は、上場企業に適用されるFRC倫理基準を含む英国の倫理要件に従って、グループに対する倫理的責任を果たすとともに、またグループの独立性を維持している。 当該基準により禁止されている非監査サービスは提供していない。


監査の概要(Overview)として、監査の範囲についての概要に続いてKAMが記載されている。重要性の金額は、税引前利益の5%を下回っており、カバレッジも97%と、監査範囲は十分であると考えられる。

重要性: グループ財務諸表全体

115百万ポンド

税引前利益の4.3%

カバレッジ

税引前グループ利益97%

KAMが6つ識別されている。これらは、重要性の高いものから順に記載されていると説明しているのは、利用者にとって有用だと思われる。5つ目の正確性リスク以外はすべて見積りの不確実性の伴うリスクである。最後のKAMはグループ内の取引なので連結監査ではKAMにならないのではないかと思われる。

監査上の主要な検討事項(KAM)

  • BT年金制度(BTPS)における退職給付債務および市場価格のない投資の評価
  • グローバルサービスおよびエンタープライズにおける顧客との長期契約
  • 規制および訴訟規定の十分性
  • 自己創設の無形資産の経済的耐用年数
  • 課金システムの複雑さに起因する収益の正確性リスク
  • 親会社の子会社への投資およびグループ企業からの借入金の回収可能性

KAMの定義をKAMのセクションの冒頭に記載している。KAMがどういう事項であり、それに対する監査手続の結果が、個別の監査意見の表明ではないということを確認する内容である。こういった説明は、定型的な説明として求められている。

監査上の主要な検討事項:重大な虚偽表示リスクに関する我々の評価

監査上の主要な検討事項とは、我々の職業的専門家としての判断において、財務諸表の監査における最も重要な事項であり、我々が、最も重要と考えられるものとして識別した虚偽表示リスク(不正によるものかどうかにかかわらず)を含むとともに、全体的な監査戦略、監査におけるリソースの割り当て、エンゲージメントチームの注力の方向性にもっとも重要な影響を与える事項を含んでいる。
我々は、監査意見を形成するにあたっての、監査上の主要な検討事項を、監査の重要性が高いものから順に以下のとおり要約した。さらに上場企業には要求されているが、これらの事項に対応するための我々の主要な監査手続の結果も含めている。これらの事項は財務諸表全体の監査の意見形成に目的のためだけに検討されたものであり、また、その結果は、その目的のためにのみ行われた手続に基づいている。したがって、我々はこれらの事項について個別の意見を表明するものではない。

次回から、個別のKAMについて読み進めていきたい。

(参考) 監査報告書にの原文(冒頭部分のみ)

BT_Overview