2020年3月期の有価証券報告書から、「企業内容等の開示に関する内閣府令」が全面適用され、企業の事業内容に関する記述情報の拡充が求められている。多くの企業ではまだ形式的な対応にとどまっているものの、従来より統合報告書で企業情報を積極的に開示している企業を中心に、グラフや図表などを積極的に活用するとともに、開示内容を充実させている。

開示内容を充実させることが、企業の収益性に直接つながるわけでは無いが、投資家からの投資を呼び込み、またガバナンスの強化につながることにより、資本市場の好循環につながってほしいと思っている。

有価証券報告書ので拡充が求められている記述情報のうち、「事業等のリスク」のセクションは、多くの企業では、これまでは「…可能性があります。」というリスク要因のみの記述に対して、「当社グループは…対応しておりますが…」という一文を付け加えるケースが多く、物足りなさを感じてしまう。ただ、一部の企業ではリスクの定義や、戦略との関連性、リスクへの対応策に関する記述を記載するようになってきており、このような先進的な事例が他の企業にも広まってほしいものである。

もちろん「事業等のリスク」の開示を拡充させることが、企業の業績アップにつながるわけでは無いが、十分な開示をしている企業は、事業リスクについて真剣に考えていると考えても良いと思うし、それによって、リスクが顕在化した場合の対応も変わってくるのではないだろうか。

今回のコロナ禍は、航空業界の業績に多大な影響を与えたわけであるが、JALとANAがこのリスクを事前にどこまで認識していたかを「事業等のリスク」の開示を感染症の発生前後で比較することにより検討してみたい。

JAL2020/32019/3の比較  (クリックして読んでください)
JAL
ANA2020/32019/3の比較 (クリックして読んでください)
ANA


両社とも感染症のリスクは把握していたものの、ANAの方が、新型インフルエンザ感染症リスクとして独立した項目で、より具体的な記載になっていることがわかった。ただ、他のリスクの開示も含めて「…可能性があります。」といったリスク要因の開示のみで、企業としてのリスク対応策などについては言及がなく、事業等のリスクの記述を見る限り、開示府令の全面適用の影響をあまり受けていない。

リスクへの対応として、実際のところ両社にどのような差があったかは分からないものの、今後、この顕在化したリスクへの対応で両社にどのような差が生じるかを見ていきたい。

今後は、先進的な記載を紹介していきたいと思う。