今回は、2つ目のKAM 「純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債の評価」を読んでいこう。

ノムラ・ヨーロッパの有価証券報告書はEDINETで参照できる。監査報告書付きの財務諸表が原文と日本語訳を読むことができるので、是非参照して欲しい。

まずは、監査人のリスク評価と、KAMとして識別した理由の説明である。

リスク

ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンス・エヌ・デイのポートフォリオは金融負債から構成されて おり、それらの価値は様々な価格評価モデルに基づいて算定される。これらの金融負債は市場で観察可能なインプット(主にレベル2) と市場で観察不能なインプット(主にレベル3) 両方のインプットを使用した価格評価モデルに基づいて算定される。

前回の記事で取り上げた一つ目のKAMはデリバティブの評価であったが、どちらもレベル2とレベル3の金融商品であることは同じである。
次にKAMとして識別した理由について読んでいこう。

我々は、財務書類の注記20において開示されている純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債の公正価値を監査上の主要な事項として認識している。その判断においては、貸借対照表全体および重要性に対する関する勘定残高の大きさ、および純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債に固有の見積りの本質的な複雑性に起因する、関係する純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債の評価を誤るリスクも考慮に入れている。

こちらも1つ目のデリバティブと同じである。金額が大きいことと、見積りが本質的に難しいということがKAMとした理由である。見積りにあたって、どのようなインプットが難しいといった具体的なリスクが書かれていないので、監査人の職業的専門家としてのリスク判断や特に注意を払った箇所に関する情報は含まれていないのは残念である。

上で参照されている注記20である。
純損益を通じて公正価値で測定されている金融負債が、非流動と流動に区分して開示されている。
IFRS第9号では、金融負債は原則として償却原価で評価されるが、金融負債を純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定することより、それらの金融負債を公正価値で測定し、公正価値の変動を純損益に計上することも許容されている。ただし、自己の信用の変動が、負債の公正価値に与える影響については、純損益でなく、包括利益に含めることになっている。

注記20(1)
注記20(2)


それではリスク対応手続についても読んでいこう。

我々の監査アプ ローチ

我々は、実施されている関連する内部統制をテストすることで、純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債の価格評価を検証した。さらに、我々は価格評価に使用されたインプットと独立に取得した市場レートとの比較や、内部の価格評価の専門家の補助を得ながら価格評価モデルを独立の立場から検証することを含む、価格評価の実証テストを実施した。

リスク対応手続としては、評価に関する内部統制をテストするとともに、価値評価を検証している。また、実証手続として、評価に使用されたインプットについては、市場レートと比較したり、評価モデルを専門家の助けを受けながら検証したことが説明されている。


手続の説明としては1つ目のKAMのデリバティブと同じである。レベル2やレベル3の金融商品のテストであれば、これらの手続は通常実施する手続である。具体的にリスクを説明していないため、デリバティブであろうと、金融負債であろうと、同じリスク対応手続となってしまっている。

繰り返しになってしまうが、こういった説明は監査を実施しなくても書ける内容であり、監査報告書の利用者にとって特に有用な情報とは思えないのである。


IFRS第9号の初度適用に関する手続について言及がなされている。

加えて、2018年4月1日時点での自己の信用リスクに関する評価調整を含むIFRS第9号「金融商品」の初度適用に際しての純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債についての指定と測定の正確性について検証した。

自己の信用リスクによる金融負債の価値の変動を包括利益に調整する会計処理について、初度適用にあたるため、特にその指定の範囲と測定の正確性を検証したことが説明されている。


最後は開示に関する手続である。

最後に、我々は開する開示の正確性と網羅性をテストした。

開示すべき金融負債がモレなく正確に開示されているかについてテストしたという説明である。


KAMの最後に、重要な見解が付されている。1っ目のKAMと同様に内容である。

重要な見解

我々は、実施した監査手続に基づき、純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債の評価は適切であると認識している。 純損益を通じて公正価値で測定される金融商品に指定された金融負債に関する開示はEU-IFRS に定められている要件を満たしている。

KAMの冒頭に説明されているように、これらは、手続の結果について説明したものであり、個別の監査意見ではない。手続の結果をKAMに含めるかどうかは強制ではないので、日本基準のKAMでもこのような見解が付されるかどうかは不明であるが、オランダの監査報告書であれば、通常含められるものである。


(参考) 監査報告書に記載されているKAMの原文 (クリックして読んでください。)

ノムラ_KAM(2-1)
ノムラ_KAM(2-2)

 ノムラ_KAM(2E)